こんにちは、今回は、平成27年 9月18日東京地裁判決があった事例を元に、区分マンションのシェアハウスについて、お話ししたいと思います。区分マンションをシェアハウスとして収益不動産を検討する際に押さえておきたいチェックポイントです。
どんな事件だったのか
本件マンション管理組合の原告が、本件マンションの区分所有者である被告に対し、シェアハウスとして多数の者を居住させていることが、管理規約違反にあたり、区分所有者の共同の利益に反し、当該行為の禁止、間仕切りの撤去を求めた裁判です。
問題点は?
本件の問題点は端的に以下の点です。
①管理規約に反しているか
当マンションの管理規約12条では、「専有部分を専ら住宅として使用するものとし他の用途に供してはならない」と定めています。この住宅の意味が争点になったのです。
②使用細則改正の有効性また使用細則違反の有無
当マンションの管理組合は、平成25年の臨時総会で使用細則を改正し、各専有部分を事業及び営業目的にシェアハウスとすることを禁止することを定めています。使用細則の改正の有効性や、使用細則違反に当たるかどうかが争点になりました。
③区分所有者の共同の利益に反しているか
マンションの区分所有者は区分所有者同士の共同の利益に反する行為はできないこととなっています。本件では、複数の人間がマンション内に出入りすることから、共同の利益に反するのではないかどうか争点になりました。
④権利濫用にあたるか
民法に「権利の濫用はこれを許さない」という規定があります。正当な権利を持っている者であっても、その権利を行使することが、他者に多大な損害を与える、あるいは社会的概念から逸脱していると判断される場合は、権利の行使が許されない、とされるものです。本件においても権利濫用かどうか争点になりました。
裁判所の判断
結論
請求は認容されました。本件建物において、寝室その他の個室として用いることができる区分の数が3を超える間仕切りを設置して、複数の人間と賃貸借契約を締結し、契約者に使用させることを禁ずる。被告は本件建物に設置された各間仕切りを撤去せよ というものでした。
①管理規約12条の解釈
裁判所は、そもそもその構造上、各戸をそれぞれ一つの家族または一人の単身者(平たく言えば一世帯)が生活の本拠として使うことが想定されているので、複数世帯が使うシェアハウスのような形態は、管理規約12条にいう住宅にはあたらない。
したがって、当マンション管理組合は、管理規約に基づき、被告(シェアハウス区分所有者)に対し、行為の差し止め、及びその排除のための必要な措置をとることができる。
★あいまいな点
それでは、その3つの世帯が完全に別ではなく、親族の場合はどうなるのか、親族は何親等までが認められるのか、違反逃れの為シェアハウス区分所有者が親族と3つの賃貸借契約を締結し、転貸契約した場合は同様に差し止めの対象になるのかなどがあります。しかし、管理規約12条違反を逃れるためだけに策を施すこと自体、同じマンションの区分所有者同士のコミュニティを考えると好ましくはないでしょう。
②使用細則改正の有効性また使用細則違反の有無 ③共同の利益に反するか
この点についても、上記と同様の理由により、違反に当たるにしても、シェアハウスとしての使用禁止、原状回復に留まることとしています。
④権利の濫用にあたるか
区分所有者が事前に管理組合に同意を得た事実はなく、管理組合が、会社事務所として使用することを認めた事実はないことから、権利濫用に当たらない
区分マンションシェアハウス化の可能性をどう判断するか
投資家としては、空室リスクが低い、通常の賃貸物件よりも収益性が高い等、メリットのあるシェアハウスですが、分譲マンションの性格上、生活拠点として保有する方が大多数であれば、抵抗を押し切ってシェアハウス化するのは困難でしょう。したがって、シェアハウス化することを検討するならば、管理規約を確認しておくことが必須となります。