マンションの駐輪場が足りない! 8つの改善方法と効果を比較

Indoor bicycle parking at the condo is small. There is a mix of children\'s bicycles, road bikes, and bicycles with child seats. Bicycles are also placed outside the bicycle parking area. 管理組合の運営

自転車・バイク置き場がいっぱいだ。駐輪場以外に停めている。・・・駐輪場の問題は、抜本的な改善が難しく、多くのマンションが頭を抱えています。
駐輪場問題で多いのは絶対数が不足している場合です。自転車の数がマンションの駐輪可能台数を超えているのです。
これは深刻な問題で、単に駐輪場に停めることができないだけでなく、駐輪マナーの低下、車両の損傷、そして、マンションそのものの資産価値の低下に繋がる可能性があります。

本記事では、駐輪場問題の解決に繋がる対策の実施タイミングや合わせ技を、実例を踏まえ説明していきたいと思います。本記事が、駐輪場問題に悩む皆さんのお役に立てれば、望外の喜びです。
また、法令の制限(建ぺい率・容積率)で実現が困難な駐輪場増設方法については、割愛します。

この記事は以下の方に向けて書かれています。
・駐輪場(バイク置き場)問題に悩む住民の方。
・理事会関係者で解決方法を模索している方。

この記事の種類は?

入門的 ★★★☆☆ (3.0)
重要度 ★★★★★ (5.0)
難しさ ★★★★☆ (4.0)
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旺盛な自転車利用需要が駐輪場問題を加速

「マンションの開発事業者は、設計段階で、将来駐輪台数が増えることを織り込んで、設計するべきなのではないか。」
マンション購入者のそんな悲鳴も聞こえてきそうですが、残念ながら、駐輪場に余裕を持たせて設計しているマンションは多くないのが現実です。

また、拍車をかける様に、自転車需要は堅調の様で、身近な移動ツールとして欠かせないものとなっているようです。
経済産業省の調査結果です。

堅調な自転車需要の推移
経済産業省Webサイトより引用
電動アシスト車が牽引、堅調な自転車産業|その他の研究・分析レポート|経済産業省 (meti.go.jp)

そして、若年層ばかりではありません。熟年層でも、自転車の利用は増えているようですね。
au損害保険㈱の調査結果です。

高齢者が運転免許証返納後も身近な足として自転車を利用
au損害保険㈱Webサイトより引用
~65歳以上の自転車利用実態を調査~65歳以上の2人に1人が自転車を利用 うち、約2割が運転免許証返納後の移動手段として利用 自転車保険加入率は51.6% 利用中のトラブルは63.4%が経験 | 2022年 | au損害保険株式会社 (au-sonpo.co.jp)

 

あるマンションの総会の席での質疑応答

質問があるのですが、駐輪場のことなんです。
夜帰ってくると、駐輪場がいっぱいで、停めれないんです。

なんとかなりませんか?

議長

使わない自転車は処分していただくよう折をみて周知しています。

置き方も駐輪場の入り口に停めていたり、置き方もまちまちで、外に停めないといけなかったりで、本当に困っているんです。

議長

議長

適宜周知を図っていますが、駐輪場も容量がいっぱいで、皆様に整然と停めていただくようご案内いたします。

以前とあまり状態は変わっていないと思います。停める人が使いやすいように改善して下さい。

議長

管理会社の方にいらない自転車を処分してもらうよう、意見します。この件は理事会でも協議します。

議長(理事長さん)も問題は認識しているようですが、住民の方からの意見要望に対応を苦慮されているようですね。
このように、駐輪場がいっぱいになって困っているマンションの割合は多く、マンションの一大問題になっています。それだけに、管理組合・理事会としても何らかの手は打ちたいところです。

不用自転車の無償回収サービスを利用する方法

この方法の効果は?
即効性 ★★★★★(5.0)
持続性 ★★☆☆☆(2.0)
難易度 ☆☆☆☆(1.0)

まず最初に思い浮かぶのが、不用自転車の無償回収サービス(廃棄物処理業者が行う)を利用する方法です。
理事会の決議で実施でき、作業内容も、住民周知、業者との作業スケジュールの調整、車両の移動作業等比較的軽く、管理会社が作業を代行してくれる(場合も多い)ことから利用されるケースは多いです。
手順は、①希望者を募るか②強制処分するかの2種類に分けられ、概略は下記の通りです。

【手順①:希望者を募集し処分する方法】
・希望者を募り、回収日に合わせて、一斉処分する。
【手順②:強制的に処分する方法)
・所有者が不明、または、サドルが埃をかぶっているような使わない可能性が高い自転車に印(札やシール、警告文書等)を付けます。
管理会社に依頼して、所有者が不明の自転車については警察に照会する。何度か警告した後 に、管理組合がゴミ回収業者に回収してもらう。
【バイク廃棄時のご注意】
・バイクを処分する場合、廃車手続きのこともありますので、事前に必ず警察へ問い合わせ、指示に従って下さい。

一定数駐輪車両が減少すると、駐輪場の混雑も収まり一件落着です。
が、数か月も経つと、いつの間にか溢れかえる駐輪場の状態に逆戻り、困った住民からクレームを受け、再びゴミ回収業者に依頼するという悪い循環に。
これでは問題は先送りされるばかりで、解決にはなりませんよね。
個人のものである、自転車を他人である管理組合(代行している管理会社)に処分させているのですから、それに、本来、個人が所有するものは個人が後始末をするのが筋ではないでしょうか。

合わせ技:処分するのも手間なのだと知ってもらう。

「明日は我が身」そんな風に思ってもらえる方法がこれです。
「役員みずから、自転車を移動するシーンを掲示する。」
これは、自分が置いている自転車の為に、役員が手間暇をかけていることを、知らせることで、改善効果を期待できます。
また、もう一つ!よく自治会で「ドブさらい」や、「地域の美化活動」をしていますよね。これは処分一つとっても、人の手がかかっており、大変なんだということが身をもってわかります。同じように、処分を一度自分自身で体験した役員さんは、「迷惑をかけないよう気を付けよう」という気持ちになります。

無償回収を頻繁に行うと、問題が改善されない理由

自転車を放置する住民の気持ちになって考えてみましょう。

●放っておいても、いつか誰かが解決してくれると思うから。
●自分が困るわけではないから。
●他の人もしているから。
●引っ越ししたら、自分はいないから。
●無料だから。

無償回収を行うと一時的に駐輪台数は減りますが、定期的に行えば行うほど、上記心情が醸成されやすく、自力で処分する機運がそがれます。

厳しい言い方をすれば、無償回収は一時的な緩和策に過ぎず、問題を先送りにしているだけとも言えるのです。

 

暗黙の了解機運の醸成

住民の本音

正直処分は面倒で、停めておいても自分は困らない。個人で頼むと有償で、管理組合で纏めて引き取ってもらうと無償なのだから、管理組合さんお願いします。

管理組合(理事会)の本音

自転車が増えすぎて困っているから、所在不明ということで処分してしまおう。管理会社に頼めば面倒なことは引き受けてくれる。

各戸の所有台数に上限を設ける方法

この方法の効果は?
即効性 ★★☆☆☆(2.0)
持続性 ★★★★☆(4.0)
難易度 ★★★★☆(4.0)

 

 各戸毎に所有台数の上限を設け、駐輪台数を制限し混雑の緩和を図る方法があります。
上限を超える場合、管理組合は駐輪を許可しません。
一見簡単そうなこの方法ですが、実際にどのような条件を満たす必要があるか纏めています。

実施するための前提条件1から6 (すべてクリアしたら、実施します。)

今まで使用できていた自転車が使用できない(個々の住民が不利益を被る)場合が想定されることから、総会承認が必要であると考えられます。
そして、制限内容を、使用細則に定めます。
実施までの検討課題も多く、期間を要することから、難易度は高いと判断しました。
また、一度駐輪台数が減ると、遵法意識が高まる為、効果は持続すると考えられます。

駐輪場の区画整理を行う方法

この方法の効果は?
即効性 ★★★☆☆(3.0)
持続性 ☆☆☆☆(1.0)
難易度 ☆☆☆☆☆(0.0)

駐輪場の設備は、平置き(ベタに地面に置く)、固定ラック式(1段又は2段式で金属製のラックに収納)、横行ラック式(ラックに収納後、横方向に移動可能)に分かれます。
特定の置き場が決まっていない場合、皆は自由に停めたいところに置きます。
その結果どうなるかというと、・・・エントランスの近く、屋根があるところ、2階より1階、真ん中より端っこ、入り口付近に密集する場合が多くなります。
そこで、区画整理を行い、駐輪場全体を効率的に使用できるよう区画整理を行うのです。

具体例がこれです。

実施前と後では駐輪総数は変わらないものの、同種類を同じ箇所に纏めることで整理が進みます。
理事会決議で行うことが可能ですが、その場合、十分に理解を得られず部分的な改善に留まるケースが多いです。
また持続性の面でも、住民の努力如何にかかっており、乏しいと言えます。

2段式駐輪ラックを導入し駐輪台数を増やす方法

この方法の効果は?
即効性 ★★★☆☆(3.0)
持続性 ★★★★☆(4.0)
難易度 ★★★★☆(4.0)

 

2段式駐輪ラックの導入は、容積率や建ぺい率など、法令制限のかかる場合に有効な方法です。
デメリット①:共用設備の変更にあたり、総会承認を得る必要がある、工事費用がかかる
デメリット②:2段部分の使用時に出し入れにひと手間かかる為、平置きに比べて利便性に劣ることが多い(その代わり、傷つきにくいというメリットがあります)
また駐輪台数が増加するので、効果の持続性はあるでしょう。

駐輪場使用料を徴収又は増額する方法

この方法の効果は?
即効性 ★★★★☆(4.0)
持続性 ★★★★★(5.0)
難易度 ★★★☆☆(3.0)

これは、駐輪場使用料を徴収することで、駐輪台数の減少を狙う方法です。
多くの契約者は、費用を気にしています。
無償又は低額なら置いていても構わないが、費用負担が増えるのなら使わない自転車は処分したほうが得だと考えるからです。

駐輪場使用料はサブスクリプションのようなもの?

駐輪場使用料をサブスクリプション契約ととらえると、使わない自転車は正に、「何も使っていないけど毎月課金されているお金」です。
使っていない自転車にも使用料を取られるのは、損なので処分してしまおうという心理が働きます。
これは、駐輪台数の減少を目指す管理組合にとっては願ったりかなったりです。
では、その心理が働くのはどのような場合か? その人の価値観や置かれた経済環境にもよりますので一括りには言えません。

段階的引き上げ方法

住民の反発も理解できるし、大幅な値上げも難しいのなら、最初少額(月額100円でも)で試験的に導入してみるのも一つの手です。マンション全体の便益の為であると、理解を求めましょう。

そして、狙った効果(駐輪台数の減少)が現れれば、成功です。もし、駐輪台数の減少しない場合、翌年の総会で、再値上げを承認していただくこととなります。それを続けていけば、駐輪台数は減少していくはずです。
もし、値上げが総会で否認された場合はどうなるか。その場合理由が大切です。

●自転車を使いたいから

  この場合、既に処分できる自転車はないことを意味します。別の方法を検討してください。

●これ以上の値上げは容認できないから

  値上げをしない他の方法を検討するのがよいでしょう。

定期的に駐輪シールを更新する方法

この方法の効果は?
即効性 ★★☆☆☆(2.0)
持続性 ★★★☆☆(3.0)
容易性 ★★☆☆☆(2.0)

駐輪シールは、いわばこの駐輪場に停めていいよという許可証の代わりになるものです。
自転車を使うには、許可証を明示してください。明示しない自転車は各自処分してくださいというスタンスです。

毎年、許可証駐輪シールを更新していき、1年間の許可期間をすぎたもの(貼っていないか旧シールを貼っている)は停めてはいけない自転車ですので、移動か各自処分してもらいます。

駐輪シール更新制の弱点

導入している管理組合さんの例で、困っているのはシールを更新しない自転車の処理です。

 

合わせ技:役員が自腹で骨を折っている姿を見せる

役員みずから、自転車を移動するシーンを掲示する。
これは、自分が置いている自転車の為に、役員が手間暇をかけていることを見せることで、「悪いなぁ」と思ってもらい改善効果を期待できます。
また、輪番制の元では、自分も理事となり、同じことをしないといけないかもしれません。お互いの為を思えば、考えてくれるでしょう。

安全意識に訴求する方法

この方法の効果は?
即効性 ★★☆☆☆(2.0)
持続性 ★★★☆☆(3.0)
容易性 ★★★☆☆(3.0)

駐輪場の容量がオーバーしていると特に目立つのが、各戸専有部扉付近に自転車を置くことです。
しかし、使用細則では、共用廊下へ私物を置けないことなっています。(のはずです)
自転車置場以外の場所に駐輪することも禁じています。(のはずです)
緊急時の避難通路になるからです。
美観上の問題もあります。共用廊下は住民が共同で使用する場所(半公共の場所と思って下さい)なので、私物を置いては困るからです。

 

防災訓練や消防署の立ち入り検査を上手に活用する

なかなか住民や管理会社が言っても改善しない。
そんなときは、消防署や行政の力を借りるのはどうでしょう?
●チャンス①!:消防署等の立ち入り検査で駐輪を指摘される場合があれば、住民に、行政から指導があった旨を周知します。そこで解決しなくても理事会で審議を進めるよいきっかけとなります。

●チャンス②!:防災訓練時、消防署員を呼びレクチャー・講評される場合、駐輪のことを触れてもらいましょう。

お上の威光を上手に活用しましょう。

自転車シェアリングサービスを利用する方法

この方法の効果は?
即効性 ★★☆☆☆(2.0)
持続性 ★★★☆☆(3.0)
容易性 ★★★☆☆(3.0)


シェアサイクル、自転車シェアリング、サイクルシェアリングと、呼び名は違いますが、凡そ以下の意味です。

シェアサイクルとは
自転車を共同利用する交通システムで、特にコミュニティサイクルは多数の自転車を都市内の各所に配置し、利用者はどこの拠点(ポート)からでも借り出して、好きなポートで返却ができる新たな都市交通手段です。現在、欧米を中心に世界中の500 都市以上で本格運営されています。
以下より引用:
一般社団法人 日本シェアサイクル協会(JSCA)【シェアサイクルとは】 (gia-jsca.net)

また、マンションで導入されているサービスで、㈱フルタイムシステムの「サイクルシェアリングF-rents[フレンツ]」の例があります。

24時間無人で運用可能なシェアリングサービスで、鍵から貸出返却から利用料の徴収、スマホアプリでの利用状況のチェック、自転車の保守管理も行うものです。

サイクルシェアリング F-rents[フレンツ]|製品・サービス|宅配ボックス・宅配ロッカーのフルタイムシステム (fts.co.jp)

ウィークポイント

普及途上であることです。国土交通省の調査では、全国で普及が始まっているとしていますが、大都市の一部にとどまっています。
政府の後押しもあり、今後広がっていくと予測されます。
特色のあるサービスもうまれてくるでしょう。これからに期待しましょう。

国土交通省:シェアサイクルの普及促進」より引用

道路:シェアサイクルの普及促進 – 国土交通省 (mlit.go.jp)

 

実践では

以上見てきた、各方法ですが、実践では、単独で使うのに加えて、組合の状況に応じて、戦略的に駐輪場問題を解決していきます。この解説は別の機会に譲ります。

最後まで読んでくれて、ありがとうございました。今後の運営改善に生かしていきたいと思います。感想、疑問、指摘などなんでも結構です。是非コメントをお願いします。(一番下です)

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