理事会がマンションの住民向けに、アンケートを取った方がよい場合、取らない方が良い場合

アンケートに回答する人々 管理組合の運営
アンケートに回答する人々

理事会で審議していると、よくアンケートを取ってみてはどうかという意見がでます。
理事会メンバーは数人、多くて10人程度の集会ですから、少人数で議論するより、幅広く組合員の意見を募り、聞いたうえで審議を進めたほうがよいとの一見合理的な審議の進め方です。
しかし、アンケートをとったがゆえに、かえって審議が停滞する場合(逆効果)があり、それは避けたいです。そうならないよう、円滑な審議の進行のために使いたいですよね。

この記事は、理事会の役員の方向けに、アンケートを取ったほうがよい場合と、取らないほうがいい場合について、説明しています。
理事会の円滑な審議進行のため、ひいてはよりよい管理組合運営のためにお役立て下さい。

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そもそもなぜアンケートをとるか

アンケートをとる主な目的は以下のとおりです。

●住民の要望や意見を把握するため

住民の声を聞くことで、マンションの課題や改善点を把握し、住民の要望に応えることができます。例えば、プレイロッドの整備やエントランスの改修など、住民の意見を反映させるためにアンケートを行います。

●住民の意識や満足度を調査するため

住民の生活についての意識調査や満足度調査を行うことで、管理組合の施策の改善点を見つけることができます。
例えば、共用施設の利用状況や満足度を調査し、より生活レベルを改善するための方法を検討することがあります。

●住民参加の促進や意識向上のため

アンケートを通じて住民に管理組合の運営に参加してもらい、意思決定やイベントの企画に参画してもらうことができます。
そして、意見の発信をすることで、理事会で意思決定に間接的に参加し、管理組合の活動に参加する意識が芽生えてきます。

これは参画意識の向上に役立ちます。

以上のように、住民向けのアンケートはマンションの抱える課題解決や施策改善、住民の管理組合運営への参加の促進など、住民の生活の向上を目指すために効果的な手段となります。

なお、通常、アンケートを取る主体は理事会で、取得されたアンケートの結果は理事会に報告されます。

アンケートを取るのが効果的な場合

アンケートをとって審議にプラスに働く場合です。

●重要議題・理事会だけでは判断の難しい難題や懸案事項の場合

例えば、マンションの共用施設の改修や大規模修繕を行う際など、住民の意見や希望を反映する必要があり、組合員の意見を聞くことで理事会の審議が進む場合です。今まで思いつかなかった角度の意見や、否定的な意見等を組んで審議を進めているという、組合員に対するアピールにもなるでしょう。

大規模修繕や建て替え、敷地の売却など重要な案件は、住民の意見を聞きながら、理事会が主体となって、進めていくことが大切です。

例1)大規模修繕工事について
①今したほうがよいのか先延ばしした方がよいのかどうか
②資金が足りない場合、借入をしてもよいのかどどうか

例2)駐輪場の増設について
①したほうがよいか、現状のままでいくか

●問題や改善点を把握する必要がある場合

例えば、騒音問題やごみ置き場の使用方法、駐車場の使用等、住民が感じる利便性や快適さに関する意見を聞くことで、問題点を把握し改善策を考えることができます。

普段の生活で感じていることを書いてもらうことで、理事会が問題点を把握しやすくなる利点があります。

 

よくある事例です。
1.窓ガラスの熱割れアンケート
★1戸だけではないかもしれません。複数の住戸から声が上がればまとめて修繕でき
  費用も安上がりです。
2. 騒音問題:隣人の騒音や上下階の足音など、音によるトラブル
 ★音は住戸の中でないとわからないこともあり、効果的な判断材料になります。
3. ごみ問題:共有のゴミ置き場の使用方法や分別ルールが守られていない
★ゴミを出す時間を守れない、処分ゴミを間違えて出す人にとっての牽制にもなります。
3. 住民間のトラブル:隣人との関係で生じる問題や、共有スペースの使用方法
4. 駐車場問題:使用ルールに関するトラブルや、駐車場利用者間でのトラブル
5. 共有施設の利用問題:共有施設の利用方法や時間帯に関するルール
6. 管理会社との問題:業務に対する不満や要望
7. 施設の老朽化や修繕問題:修繕費用の分担や工事期間に関する問題

 

●意見や要望を集約する必要がある場合

住民が共通して関心を持っているトピックや、新しい設備やサービスの導入など、住民の意見を集めることで、より多くの意見や要望を反映させることができます。

例)EV(電気自動車)の充電設備や24時間緊急出動サービスの導入

 

●議案の先送りや消滅、負担軽減を優先する場合

今期行いたくないことを、敢えてアンケートを取り意見徴収した形にして、議案の先送りや消滅を目的とする場合です。
例えば、住民の中のキーマンや意見の強い人から、持ちかけられた個人的な話が議題にあがった場合です。

例)ゴミ置き場を増設したい!、迷惑住民をどうにかしてほしい!等、明らかに他の住民が望んでいないことを要望された

明らかに理不尽な要求等、当人に対し審議を拒否できる場合はよいのですが、要望が一理ある場合など、積極的に取り上げたくはないが、消滅させるステップとして、アンケートを取り、住民意見を聞いたうえで消滅させるという方法があります。

その場合、アンケート結果をある程度誘導するため、作り方にもコツが必要ですが、これは別の機会に譲ります。

●抑制効果を狙う場合

特定の人に向けた内容であるが、敢えてアンケートの形にして、牽制するケースがあります。

多いのが騒音問題です。!

掲示や警告文書より、住民がアンケートに書くことにより、より意識が高まる効果を狙います。
また、理事会といっても同じ住民同士ですから、直接注意するのは角が立ちます。

しかし、アンケートで全住民に向けた内容であれば、角が立たないし、マンション全体で改善していこうという機運を醸成することにもつながります。

例)騒音を収まらせたい、ある程度目安はついているものの、特定の住戸とは断定できないが、牽制し、抑制したい!

 

アンケートを取らない方が良い場合

アンケートを取らない方がいい場合は以下のとおりです。

●理事会で決められないから、住民の意見を聞こう(単なる意見徴収)

理事会で決められないから、住民の意見を聞こうという姿勢お勧めしません。
なぜなら、理事会は管理組合の執行機関で、日々の管理・予算の執行をするのですから、原則、理事会の中で決めていくのが原則だからです。

意見徴収する場合、「理事会はこの問題をこう考えているが、住民さんの意見は如何ですか?」という聞き方がよいでしょう。

 

●決定を早急に行う必要がある場合

アンケートを実施するには時間がかかります。迅速な決定が必要な緊急の状況では、アンケートを取らずに判断を下すことが望ましいです。

 

●既に十分な情報がある場合

共用設備のメンテナンス契約の更新などが該当します。

メンテナンス業者の変更には必要ありませんが、仕様の追加など、住民の意見を聞いた方が良い場合もあります。

●意見の結果が予測可能な場合

 

例)エレベーターリニューアルの際のかご内の色の選択や、使用規則・使用細則の軽微な改定など、住民の意見が概ね賛成、想定内であることが予想される場合です。

●住民の関心が低い場合

一部の住民のみが関心を持つトピックや問題に対しては、アンケートを取る必要はありません。住民全体の関心度が比較的低い場合、緊急性のない案件は、アンケートを行わずに理事会が決定します。

 

まとめ

アンケートは合意形成のための有効なツールです。
場面場面で、効果的に使って、よりよいマンション管理組合運営に生かしていきましょう。

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