「自主管理」とは、簡単に言えば、管理業務を管理会社に頼まず、管理組合自身が管理業務を行うことを言います。
今回は自主管理を行っているマンションで起こりやすい問題点を具体例を交え解説していきます。
自主管理ができるマンションは、素晴らしいと思います。分譲マンションの管理の理想形であると思います。
しかし、残念ながら現実は諸々の問題点があり、運営に支障がでている場合が多いのが現状です。
自主管理で陥りがちな短所を上手く回避し、住みよいマンションを目指していきましょう。
入門的 | ★★★☆☆(3.0) |
重要度 | ★★★☆☆(3.0) |
難易度 | ★★☆☆☆(2.0) |
この記事は、以下の方に向けて書いています。
・自主管理を検討されている管理組合の関係者の方
・自主管理マンションを購入しようと考えている方
・自主管理マンションに住んでいて、問題点を改善していきたいと考えている方
(以下に、自主管理マンションが「やばい」と言われる理由の一部を挙げますが、これらは一般的な問題点であり、全ての自主管理マンションに当てはまるわけではありません。ご了承下さい。)
管理業務は大きく、
①組合員から管理費・修繕積立金等を毎月徴収すること、支出すること等会計や出納に関すること、理事会・総会支援業務(事務管理業務)
②管理員に関する業務、
③清掃に関する業務、
④建物・設備等管理業務に分かれ、自主管理は、これらの業務を管理組合自身で行うことを言います。
自主管理を選んだ理由
自主管理を行っているマンションは、竣工当初から自主管理を選択したわけではありません。何らかの理由があって、管理会社との契約を解除している場合が多いのです。
事例:借入金が多く修繕に必要な資金を捻出するため、管理費を削った結果
30戸程度の、地方都市の中心部に建つ小規模マンション(仮称:Kマンション)の事例です。竣工から26年たった頃、管理会社との契約を打ち切りました。
理由は、大規模修繕工事費用を捻出する為、管理組合が1500万円以上の借入を行い、その後の組合収支を圧迫していたことが挙げられます。
修繕積立金会計から借入金を返済するには重すぎ、修繕に必要な資金が積み立てられません。管理費を減額し、修繕積立金を増額する方法を選択しました。
管理費を減額すれば、管理会社に支払う委託業務費の原資が削られることになりますので、委託業務費も減額するかどうかの選択に迫られたようです。
この管理組合は自主管理にすることで、委託業務費をゼロとしました。
また修繕積立金を増額すると、修繕積立金会計の収入が増える為、修繕積立金勘定の借入金の返済割合を減らすことができ、それだけ修繕積立会計に余裕がでてきます。
管理会社への不満・不信感
Kマンションは、以前から管理会社に不信感を持っていました。
工事の相見積もりをとれば、段違いに高い見積もりであったこと、見積書の内訳が理由のつかない高い金額であったこと等です。
そして、管理組合が借り入れを行った後も、同じ状態が続いたことから、その管理会社とは付き合えないと判断したのでしょう。
結局、管理費の徴収業務だけを別会社に委託し、残りの業務を自主管理とする方法を選択しました。
教訓と対応方法
収支が厳しくなったこと、管理会社に問題解決能力がないと判断し見切ったことが、自主管理を選択した大きな理由です。
このように運営=お金の問題で自主管理に踏み切る例は多くあります。管理会社を評価する方法としては、以下のことを行うことが考えられ、早めに行っておくのもよい選択です。
理事会が管理会社の評価を住民にアンケート形式で問うてみるのもよいでしょう。
② 管理委託費と評価が釣り合っているか ・・・
世の中の値段には「相場」というものがあります。
・高品質だが高い>まぁ納得できる。
・品質よりも値段重視>値段相応まあしょうがないか
・低品質で高い>納得できない!
管理会社のサービスは属人的な部分が多くあります。(例:管理員さんの丁寧さ、人当たりがよい、フロント担当者の迅速対応等)
管理費と共に重要なのが修繕積立金会計です。健全な管理運営のためにすべきこと、キーワードは「セカンドオピニオン」です。
一社の意見・考え・金額が正しいとは限りません。色々な角度から審議を深めていって、よりよい選択をしていくようにしましょう。
工事を検討する際、同一の仕様で相見積もりを何社か依頼してみましょう。なるべく複数の 情報ルートから入手した方がよいです。
② 長期修繕計画は、専門の会社に依頼してみましょう ・・・
建築事務所やマンション管理士等に依頼してみるのもよいでしょう。大事なマンションの将来の為です。出費しても損にはならないと思いますよ。
自主管理マンションで起こる可能性が高いこと
管理能力の不足による住居環境の悪化
自主管理マンションは組合員が主体となって管理運営が行われます。
しかし、管理組合や理事会メンバーが経験不足や能力不足である場合、適切な管理や問題の解決が行われず、住居環境が悪化することがあります。
また、理事会が間違った方向に向かった場合、本来是正をするのは監事の役目ですが、管理会社の存在が大きいように思います。自主管理では牽制が効きにくいことがあります。
管理費の滞納の多発
自主管理マンションでは、滞納者に対するフォローが手薄になりがちです。
管理会社が行っていた、督促電話やSMS、書面作成は全て自前で行わなければいけません。また法的措置を行う場合、弁護士・司法書士費用が発生し、折衝等も自前で行うことになります。
経験上、兆候が見えた時点で早めに適切なフォローをしていれば、長期滞納に発展するのを防げた例が大半です。
自主管理はどうしても督促が手薄になり、滞納が増える傾向にあります。
トラブルの解決が困難・遅れが生ずる
自主管理マンションでは、住民同士のトラブルや問題解決が管理組合や住民自身で行われることが多いですが、住民同士の意見や利益が対立する場合、解決が難しくなることがあります。
維持修繕の適切な運営がおぼつかないことも
自主管理マンションでは、住民が共有部分や共有設備のメンテナンスを行う必要があります。しかし、住民がメンテナンスを怠る場合、共有部分や設備が劣化し、住居環境が悪化することがあります。
また、不具合発生時の適切な対処を理事会で考えて実行していかなければなりません。
中長期的にもマンションの維持修繕は重要なテーマですが、長期修繕計画を立案・実行していく組織が必要です。マンション内に専門家や取りまとめ役が必要となってきます。
制度・法令順守の不徹底
自主管理マンションに限らす、マンションを取り巻く法律は、地方自治体の条例や国の法令(例:マンション管理適正化法等)に基づいて運営されます。しかし、法令に通じていない場合、制度や法令の解釈の相違などがある場合、法令に準じていない等の問題が発生しやすくなることがあります。
☆彡 おのずと襟を正さざるをえませんね。
個人情報の漏洩の危険性
管理組合員の氏名、住所、電話番号といった個人情報は、管理者が管理することになります。そして管理者とは通常理事長が務められます。こういった個人情報を、個人が一手に集約することになりますので、個人情報の管理には住民一人一人が注意していく必要があります。
さいごに
これらの問題を回避するためには、住民間のコミュニケーションや協力体制の強化、管理組合・役員の適正な選任や能力向上のための研修などが必要となってきます。
また、事例のように、管理費や修繕積立金の徴収を専門の会社に任せたとしても、それでは預金口座の管理をどのようにするのか一つとっても、難題です。
また、清掃業務や他の業務を組合員にしてもらう場合、大きな責任と負担が伴います。
今回は自主管理の功罪について、説明してきました。自主管理を選択されている組合様、自主管理を選択されようとしている組合様、自主管理マンションの購入をされている方に参考にしてもらえれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。今後の運営改善に生かしていきたいと思います。感想、疑問、指摘などなんでも結構です。是非コメントをお願いします。(一番下です)
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